記憶の扉
 
裕樹の言葉で急に父の死が現実味を帯びてきた。

あんなに嫌いだったひとなのに、胸が締め付けられ、身体がこわばる。


裕樹はそんなわたしを見て、申し訳なさそうな顔をする。

「もう、そういう意味じゃないんだってば。悦ちゃんのこと、ほっとけないだけなんだ」

恥ずかしげもなくそう言う裕樹は、旅の支度をすでに始めていた。

 


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