記憶の扉
病院にて
病院に着いた時には、まだ薄暗く、病院の玄関には鍵が掛かっていた。
建物の裏手に人影を見つけると、裕樹は慌てて追いかけた。
「看護婦さんかもしれない」
わたしも後を追う。
角を曲がると、裏口のドアを開けて、裕樹が交渉していた。
わたしと目が合うと、手を大きく挙げて丸をつくった。
病室のドアを開けると母が驚いて立ち上がった。
「飛行機で帰って来たの?早かったわね」
ひそひそ声で話す母に夜行列車で来たことをひそひそ声で説明し、裕樹を紹介した。
深々と頭を下げる裕樹が妙に可笑しかった。
「一時は心配したけど、もう大丈夫みたい」
母の笑顔を見て、わたしもやっと安心した。