記憶の扉
父はイビキをかいて眠っている。
「朝ご飯、食べた?ちょっと出ましょうか」
近くのファミレスに入ってモーニングを注文した。
明るくなった窓の外ではそろそろ日常が始まろうとしていた。
「お父さん、ずっと悪かったの?」
「それが昨日まではなんともなかったのよ。お父さんったらジョギングなんて始めるもんだから、きっと無理したのね。倒れたのはその最中だったの。先生がおっしゃるには腎機能が落ちてるんですって」
わたしは糖尿病とか人工透析とか、腎臓に関係のありそうな医学用語を思い浮かべていた。
「腎臓病だと食事が大変になりますね」
「えっ、そうなの。特別なもの、作らなくちゃいけないの・・」
裕樹におどされて、料理の苦手な母は困ったような顔をしてみせた。