恋の魔法のかけ方
「こんな時・・・なんて言ったら良いだろう・・・。」
ちょっとはにかんだような顔をして、独り言のようポツリと話を切り出した今井君。
今井君も、私と同じ事考えていたなんて意外。
「俺さ。ライブの時、ハナの事ずっと見てたんだ・・・。なんか、後ろのほうで見てて、『もっと前の方来てくれれば良いのに~』って思ったりしてさ。つまんなかった?ライブ?。」
私の事、見てた?
アレだけ人が居て、あんなに盛り上がってたのに?
「つまんなく無かったよ。すごかった!!」
私は、力をこめてそう言った。
すると、今井君の顔がパッと明るくなって、
「そう!じゃあ、良かった・・・。」
そう言うと、また変な沈黙がやってきた。
こんなに静かな今井君見たのは、始めてかも・・・。
いつもは、友達とワイワイ騒いでて、話の中心にいて、笑ってて・・・。
「あっ!俺、何か飲み物買って来るよ!」
今井君は、立ち上がった。
買いに、行っちゃうの?
私は思わず今井君の上着の裾を持った。
「そう・・・だよね。また1人になると・・・。」
私が俯くと、大きな手が私の目の前に差し出された。
「じゃあ、一緒に行こ!」
ニコリと笑ったいつもの笑顔。
私は、差し出された手を握った。
温かい大きな今井君の手。