輝かしい変貌
「やっと仲間が揃ったようじゃの。めでたいわい。」
今夜の老人は酒を飲んだのか、ほろ酔い気味だった。
「はい、やっと集まりました。それでこれからどうすれば良いですか?」
「明日、早速旅立ちじゃ」
「え?それは急な。それにやっぱり本当にやるんですか…?」
「何を今更!よいか、お前勇者なんだぞ?弱気になってどうする?」
「…はぁ」
「明日の朝六時に山川駅改札前に集合じゃ。その次の手順はまた伝える」
山川駅とはここの最寄り駅から三つ離れた駅だ。
「朝六時?そんな早く?」
「当たり前じゃ!早い内の方が人目に付きにくいじゃろうが」
「しかし会社はどうすれば…」
「やはり貴様はまだただのハゲの様じゃな…よいか、これから国を変えるために立ち上がる勇者が会社のことを気にしてる場合か?仕事なぞしてる暇はない。全てを捨てて挑むのが当たり前じゃ!」
老人の憤怒の度合いはすごいものだった。高橋さんはただ絶句するしかなかった。
「よいな、明日朝六時に山川駅じゃぞ!それと武器を忘れるな!何でもいいから自分の身を守れる武器を用意しろ!他のゴミ共にはわしから夢の中で伝えておくから。ではさらばだ」
高橋さんは目覚めた。時計を見ると朝四時半。今から支度をしてちょうどいい時間だ。そっと起きてリビングに行くと、母茂子もちょうど寝室から起きてきた。
「おはよう」
「…おはよう」
二人は立ち尽くす。お互いの心の内を探り合ってる様だ。だが今更ひけない。恐らく後の二人も来るだろう。裏切れない。茂子は少し頬を緩めると
「武器、何持っていく?」
と言った。
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