輝かしい変貌
まだ外はほのかに薄暗い。所々思い出したように浮かぶ薄い雲は、今の高橋さんの気持ちを映した様だ。隣に立つ茂子も同じ心境だろう。ここまでの移動中、親子に会話は無かった。予定より早く着いた山川駅はまだラッシュアワー前ということで人通りもまばら、それが逆に高橋さんを不安にさせた。いつもとは明らかに違う朝。少し前の自分はこんなこと想像したことも無かった。女性に無縁、仕事もそこそこで、きっと自分はこれから先何も起きず、淡々と人生という階段を昇り続けていくと思ってた。だが彼は変わった。決意したのだ。この国を変え、そして母を守りたい。茂子が仲間に加わった時、こんなに心配になった自分に驚いた。いて当たり前と思ってた母は、実はかけがえのない存在だったのだ。高橋さんは座ったベンチでタバコに火を付けると、深く煙を吸い込み、そしてむせた。
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