輝かしい変貌
高橋さんは青白い顔面でいつもの様に出勤すると宮川さんが待っていたかのように話かけてきた。
「高橋さん、ちょっといいですか?」
「…へ?」
高橋さんは訳が分からないまま、給湯室の奥に連れて行かれる。宮川さんと話すのは無論、間近で見るのも初めて。高橋さんは異常な胸の高鳴りを覚えた。しかも宮川さんは深刻な表情だ。高橋さんは緊張のあまり、体が震える。
「…最近、高橋さんが出てくる夢を毎晩見るんです…」
「…そうなの」
高橋さんは免疫0。どう答えていいのか全く分からない。
「あ、ごめんなさい。正確に言うと変なおじいさんが出てきて高橋さんに協力しろって言ってくるんです」
「…!」
高橋さんは絶句した。まさかあのジジイか?
「それは本当か?!僕も毎晩じいさんが出てきてお前は勇者だ、この国を変えろってしつこく言われてる!」
「嘘?! じゃあやっぱりあの夢って本当だったんだ…」
二人は信じられないといった顔で見合わせる。
「僕が…勇者」
高橋さんが呟くと、宮川さんがいきなり笑い出した。
「ハハハハハハ!」 「お、おい、何だよ?」
「すいません、高橋さんが勇者とかマヂウケちゃって」
高橋さんは何も言い返せない。確かにこんななんの取り得もないデブでハゲなオレが勇者とか笑いのネタにしかならないよな…。
「でも、お告げでそう言われたんだから大丈夫ですよ!それに私仲間でしょ?応援します!」
笑い終わった宮川さんが真顔で言った。
「…本当かい?そりゃ助かるな。じゃあ一旗揚げてみるか」
「はい!とりあえず作戦練りましょう。今日仕事終わったら駅前の飲み屋で待ってます」
宮川さんはそれだけ小声で伝えると給湯室を出て行った。
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