パノと魔法使いとその仲間
持ち上げた箱はやけに軽い。

上から眺めて、そのまま横を向けて一回転させると、こんどは下を向けてゆさゆさと揺さぶってみる。

「何だろうねえ?」

大事な忘れ物だったら大変だと、大家は箱を塞いでいるテープに爪を立てた。

ガムテープの端を引っ掛けてみるが、なかなかはがれない。少し苛立ちを見せた大家だったが、ついにわずかに端が浮いたテープをつまむことに成功した。


暗闇の中に紙がはがれるざらついた音が響く。何事かとパノは目を見張った。

そしてそれが箱を開けているのだということに気づくと胸を躍らせる。そしてブツリという音と共にフタに貼られたテープはついにはがされた。


(アヤだ、アヤが思い出してくれたんだよ!)


ずっと昔にこのフタが閉じられた時のことを思い出していた。
 

ゆっくりと光が遮られて、最後は線になって消えていった悲しい思い出。

その光景のフィルムを巻き戻しているようだ。



暗闇に線が現れると、たちまちパノの視界は眩しい光に包まれた。

(うひゃあ、まぶしいよぉ)

もう何年も箱の中にいたパノは、その明るさに目がくらんで何も見えない。

でもようやく慣れてくると、ぼんやりと目の前に顔が現れた。
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