パノと魔法使いとその仲間
(アヤ!)

黒い影しか見えなかった顔が、だんだんと容を整えてきた。

(アヤ……?)

しかしそこにあったのは、かつてパノが見たアヤの顔じゃなかった。

(ええ!?)

期待に胸を膨らましてようやく会えたと思った人物は、似ても似つかないおばさん。

(もしかして……年を取っちゃったの?)

その思惑とは裏腹に、パノをじっと見つめる視線は明らかに珍しげなものを眺めるものだ。パノはそれを見て状況を悟った。

(アヤじゃない……)


パノたちを眺めた大家は「ふーん」と、鼻息を漏らす。

「どうしたものかねえ?」

大家から見れば、それが大切なものかどうか図りかねるといったところだろう。

下手に連絡を取って取りにこさせる手間を考えると、どうしたものかとため息が出たのだった。送るにしてもそれほど大切なものにも見えない。

「ゴミと一緒に置いてたんだしねえ」

都合の良いように考えれば、あくまでゴミだと言えなくも無い。いや、その確率は決して低いものじゃないように思われた。

「捨てちゃうか」

そう言って大家は、ゴミ袋と一緒にその箱を手にして部屋を出た。
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