パノと魔法使いとその仲間
ゴミの集積所につくなり、大家が声を上げる。
「あらあら、いっぱいじゃないか」
金網に囲まれたゴミ置き場は連休前ということもあるのだろう、上まで山積みになっていて、手にぶらさげたゴミを放り込むスペースが見当たらない。
「仕方ないねえ」
そう独り言を呟くと金網の外に袋を置き、そして箱をその横に放り投げた。
少し開いた箱のふたからバノの金色の髪が見える。それを一瞥すると、大家は自宅に向かう道へときびすを返し、そして箱は静かにそこに取り残された。
その頃アヤは高速道を走っていた。お気に入りの曲を大音量で鳴らすのは、不安を紛らわすいつもの癖だ。
新しい生活への期待よりも、むしろ不安のほうが大きいと言えた。この引越しもそんなに心躍るようなものじゃない。
天気は良かったが、その頭には過去の悲しい出来事が浮かんでは流れてゆく。
あのアパートでは一応は穏やかに過ごしてきたつもりだ。でも、それでも悲しみに浸ったままだった気がしていた。
「あらあら、いっぱいじゃないか」
金網に囲まれたゴミ置き場は連休前ということもあるのだろう、上まで山積みになっていて、手にぶらさげたゴミを放り込むスペースが見当たらない。
「仕方ないねえ」
そう独り言を呟くと金網の外に袋を置き、そして箱をその横に放り投げた。
少し開いた箱のふたからバノの金色の髪が見える。それを一瞥すると、大家は自宅に向かう道へときびすを返し、そして箱は静かにそこに取り残された。
その頃アヤは高速道を走っていた。お気に入りの曲を大音量で鳴らすのは、不安を紛らわすいつもの癖だ。
新しい生活への期待よりも、むしろ不安のほうが大きいと言えた。この引越しもそんなに心躍るようなものじゃない。
天気は良かったが、その頭には過去の悲しい出来事が浮かんでは流れてゆく。
あのアパートでは一応は穏やかに過ごしてきたつもりだ。でも、それでも悲しみに浸ったままだった気がしていた。