パノと魔法使いとその仲間
大型のトラックが強引に追い越し車線から割り込んできて、アヤは慌ててブレーキを踏んだ。

「きゃあ！」

危うくトラックの後部にぶつけられそうになって、アヤの心臓は飛び出しそうなほど高鳴る。

「びっくりしたあ……」

その胸を押さえて恐怖にすくんだアヤとは対照的に、そのトラックはまた追い越し車線に強引な割り込みをしていた。慌てた乗用車がクラクションを鳴らして警告すると、そのトラックは激しくブレーキをかけて嫌がらせをしてみせる。

「なんて運転してんのよ！」

先ほどまで物思いに耽っていた頭が怒りで沸騰しそうになった。おまけにさっきのブレーキで、後部座席に積んでた荷物が崩れてしまっている。

「もう、最悪！」

またもや割り込みをしながら追い越してゆくトラックを視界の端に捉えながら、アヤは後部座席に手を伸ばして荷物を押し戻す。

その時、大事なものを忘れていた気がして手が止まった。


一瞬硬直する体。


必死で記憶を辿ったとき、その事柄に思い当たった。

「パノ！」

アヤにはあの箱を積んだ記憶がない。手探りで衣類の入ったバッグを横にどかし、さらに壊れ物を入れた箱を手当たり次第に掻き分けた。

（やっぱりない……どうしよう）

目の前が暗くなる。


そして一瞬後ろの荷物に目をやったとき、激しいブレーキ音で意識を運転に引き戻された。



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表紙・目次

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