パノと魔法使いとその仲間
箱を叩く雨粒の音が大きくなっていた。わずかに開いた箱のふたから、弾けた雨粒がパノたちに降り注ぐ。

(誰も迎えにこないなあ)

ほとんど人通りがなくなった道端で、パノとライスシャワーは身を寄せるようにして箱に収まっていた。

静まり返っているより、雨音がするほうがなんだか寂しげで悲しみを誘う。

(アヤはまだかなあ……)

パノはまだアヤが迎えに来てくれると信じていた。それにぬいぐるみだから他にやりようもない。

ライスシャワーもつぶらな目をじっと一点に向けたまま、そぼ降る雨に耐えていた。

もうここに放り出されて随分と時間が経っている。


箱に雨が沁みて、それはじわじわとパノの体に侵入してきた。

(冷たいよぉ)

水に濡れるとぬいぐるみは力を無くすようだ。

その体が重くなってくるのを感じると、パノの頭はかすんだように思考が曖昧になって、考えがまとまらなくなってきた。

(アヤ……リョウ……)


遠い昔、幸せだった頃の記憶がぼんやりと頭に浮かんでくる。あの頃、パノはいつも家族と一緒で、その家族はパノをいつも愛してくれていた。

小さな体をいつも抱きしめてくれたリョウとアヤ。


それはもう取り戻すことは出来ないのだろうか?
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