パノと魔法使いとその仲間
パノのうつろな視線の目の前に、トラックが巨体を揺らせ、立ちふさがるようにして近づいてきていた。

車体の外、後部に掴まった作業員が次の収集に備えて身構える。


その運転席、ワイパーが雨を掻き分けるフロントウィンドウを凝視していた運転手は、突然急ブレーキを踏んだ。

「あぶねっ!」

後ろにつかまっていた男は落ちそうになった体を必死に支え、ようやくこらえると運転手に文句を言った。

「すまんすまん、いや猫が飛び出してきてよ!」

運転席の窓を開けてそう謝った運転手は、再び前方へと目を戻すと忌々しい猫を探す。

その猫はゴミの前に居た。いや、正確にはその手前、二つの何かが放ってあるところだ。

「ちっ!」

構わずその横にトラックをつけようとした運転手は再びブレーキを踏んだ。

今度は人が頭をさげながら目の前を横切ってゆく。

「あぶねえだろ!」

その人物に向かって声を荒らげた。

「すいません、ちょっとウチの猫が」

すいませんと言いながら、その人物は急ごうとはしない。それは先に占いをしていた女性だった。

黒い帽子に黒いワンピース。胸には幾多のネックレスと腕にもブレスレット。そのいでたちはまさに魔女のようだ。

「マイケル、どうしたの?」

飼い猫の後を追ってきた女性は、マイケルが鼻でつついているそのぬいぐるみを見やった。

「あらあら可哀想に」

赤いとんがり帽子に金色の髪、緑の服に黄色いズボン。そして右手には笛を持った──


パノを拾い上げた。


「こっちにもお馬さんが……」

さらにライスシャワーを拾い上げると、手にした二人ににっこりと笑いかけ、まるで生きた者に話すように言葉を掛けた。

「もう大丈夫。危ないところだったわね」

そしてトラックの運転手にペコリと頭を下げると、マイケルを引き連れてその場を去った。
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