パノと魔法使いとその仲間
パノは薄れた意識の中で揺らめく炎を見ていた。それは温かく、芯まで冷えた体をほぐしてくれる心地だ。

そのかたわらに人影を見た気がした。

(誰だろう……アヤなの?)

再び混濁した意識のなか、パノは夢を見ていた。あの日、箱に閉じ込められてしまった悲しい夢を。そして先日置き去りにされた夢を──


その閉じられた箱がいきなり光に照らされ、パノは意識を取り戻した。


(アヤなの?)


目の前に自分を覗き込んでいる人がいる。

「ごめんね、君の思ってる人じゃないの」

(そうかあ……違うのか)

そこでパノはその違和感に気がついた。

(ええ!)

「そう、わたしは魔法使いのお姉さんなの」

「おばさんにゃ」

「マイケル!」

キッと声のするほうを睨むと、マイケルはそ知らぬ顔をして前脚を舐めた。

どうやら夜の間に橋の下に移動して、焚き火でパノたちを乾かしてくれてたようだ。まだくすぶる焚き木が、焦げ臭い臭いを放っていた。

(猫がしゃべった!)

「マイケルは特別なの。でも君にも魔法をかけてあげれば特別になれるわよ」

(ホントにおばさん魔法使いなの?)

「そうよ、お・姉・さんは魔法使いなの」

(特別ってどんなになるの?)

「悪いと思ったけど君の夢を見せて貰ったわ。すごく悲しくて、切なかった……」

しんみりした顔でそういうと、女性は親指で目をこすった。

「君はアヤさんに会いたい?」

(うん!)

「でもお姉さんはずっと一緒にいてあげられるわけじゃないのよ。それでも良い?」




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