好きなんだ
兄の意思は 


固く 


何言ってもダメだった 



「心配だから」



兄は言い切った 



「これ片方やるから」


それは前からくれるって約束していたピアス 



男物だったけどシンプルでかっこいいデザインが好きだった 



「まだ片方しかあげないけど」



そう言って柚の手にピアスを残し兄は家を出た 



柚はすぐに穴を開けた 


痛みはなかった 



それよりあの女が許せなくて 



何より淋しかった
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