初恋【短】
非、現実的。
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「頭を強く打って、即死だったそうよ。」
「たしか、彼女を庇って・・・」
ヒソヒソと小さな声で話していた看護師達が、あたしに気づいてばつが悪そうな顔をした。
「・・・あなた、たしか葵ちゃんよね?晃平から話は聞いてたわ。」
泣き腫らした目をした、初めて見る晃平のお母さん。
何も言わないあたしに、晃平のお母さんは言った。
「晃平の顔、見てやって。・・・悲しいかもしれないけど、現実だから・・・」
現実。
その言葉すら、非現実的だ。
白い布が被さった、晃平の顔。
・・・いや、これは晃平じゃない。
あたしは、夢を見ているの。
そう、これは悪い夢なの。
いつも、授業中に寝てるから、今はそれで夢を見てるんだ。
目を閉じる。
・・・目を開けて、そしたら、いつもみたいに晃平が「なに寝てんだよ」って言ってくるから。
目を、開けたら。