初恋【短】
「・・・お客様が買った指輪には、不思議な力があるといわれてるんです。今、一番大切な人の素直で、本当の気持ちが聞けるんです。
それって、すごく魅力的だけど、少し不安ですよね。
・・・もし本当にわかるんだったら、お客様は何を聞きたいですか?」
「・・・それって、相手がもう傍にいなくても?」
「え・・・・?」
店員さんの顔が固まった。
そして何かをわかったように、言った。
「・・・はい、たぶん。」
「ありがとうございましたー」
閉まっていくドアに、店の中の人の声が小さくなる。
あたしは、何気なく立ち止まった。
そして、何かのお店のガラスに映っている自分をぼんやりと見る。
・・・一番、大切な人。
晃平の、素直な気持ちが聞ける?
晃平は、今どう思っているんだろう。
一人で、たった一人でどこかにいる晃平は。
「晃平・・・」