初恋【短】
「葵っ!」
耳を、疑った。
この、声・・・晃平?
「葵っ?」
はっとした。
目の前には、さっき見ていた自分が映っているガラス。
そして、あたしの手を握っている晃平が居た。
「晃平・・・」
「ん?どした?何か欲しいもんでもあった?」
不思議そうにあたしを見つめる晃平。
いつもと変わらない。
よく聞くと、街にはクリスマスソングがどこからか聞こえる。
お店や道はクリスマスならではのイルミネーションがたくさん。
どうして?スリスマスは終わったはずなのに・・・
「晃平?今日、何日・・・?」
「葵、何言ってんだよ。25日だよ?」
そう言って晃平は笑う。
それは、いつもと全く変わらない笑顔で。
あたしは咄嗟に、晃平に抱きついた。
「うおっ?!葵・・・?どうした~」
夢かもしれない。
あたし、1週間前に戻ってる。
あんなに会いたかった晃平が、そのぬくもりが、目の前にある。
抱きしめて、少しでも放さないようにしたかった。
「・・・葵~?ったく、どうしたんだよ」
晃平が困ったように言う。
でもあたしは何も言わないで晃平に抱きつく。
もう、離れていかないで。
ずっと、ここに・・・。
「・・・せっかくの初デートなんやぞ~ほら、行くぞ!」
そういって晃平は、あたしの手を握りなおして歩き出した。