初恋【短】
・・・「可哀相に。まだ中学生だったんでしょう?」
「恋人と遊んでいて事故にあったんですって。・・・彼女、悔やんでも悔やみきれないわよね。」
本当に、あの中に晃平がいるのだろうか。
本当に、これは現実なのだろうか。
黒い服を着た人たちが次々と晃平の写真を見ては渋い顔をする。
悪い夢なら、早く覚めて欲しい。
『可哀相に』
『悔やんでも悔やみきれない』
大人たちが言う言葉の、意味がわからない。
晃平は、死んでなんかない。
・・・つい昨日まで、あたしの隣で笑っていたのだから。
晃平の、「葵」って呼ぶ声が好き。
学校に行けば、電話をすれば、いつだって晃平の、「葵」って呼ぶ声が聞けるんだから。
晃平は、死んでなんかない。
今も、晃平の手のぬくもりがあたしの左手にあるのだから。