初恋【短】
買い物をしたあたしたちは、店を出た。
「晃平、ありがとう!」
あのお店で、あたしはある指輪に一目惚れしてしまった。
シルバーのリングに、ハートが彫られている指輪。
それをずっと見つめていたあたしに、晃平が「それ、買ってやろうか?」と言ったのだ。
もちろんあたしは即答。
その指輪は、今まさにあたしの指にはめられようとしている。
「クリスマスプレゼントな。」
「うん!・・・あ、これどこにはめようか?」
すると晃平は何かを思いついたような顔をして言った。
「ん・・・それ、貸して?」
指輪を晃平に渡す。
何だろう?
「左手、貸して。」
晃平の方に手を出す。
晃平はあたしの手を握って、指輪を薬指にはめた。
「・・・!」
あたしは晃平の顔を咄嗟に見た。
晃平は、恥ずかしそうに目を泳がせて、言った。
「・・・『いつか』のための、予約。」
「ふはッ!晃平ってこんなことするんだ~!」
「笑うなッ!」
笑うあたしに、晃平は不機嫌な顔をする。
でも、それ以上に幸せだった。
もちろん、あたしも。
・・・晃平。
あの日何をしていたら、あの不幸な事故を防げたんだろう。
あの、恐ろしい事故を。
・・・晃平、今もあたしはどこかにあなたの姿を探しています。