鈴が鳴る時―王子+ヌイグルミ=少年―
とその時

「う~ん…鈴音ぇ?今何時ぃ~?」

「え」「?!」

 かなりタイミング悪く、詩穂が起きてしまった。

 ぎし、ぎし、と錆びたロボットのようなぎこちない動きで振り返る。

 詩穂はゆっくりと身体を起こして目をこすっていた。

 なぜか慌てている様子の鈴音を不思議そうに見る。

「鈴音?どうしたの?」

「いや、あの、えっと~、その~、ヌイグルミがぁ~…ちょっと、ね」

「ヌイグルミ?」

「あっ、えっと、うん。その…猫のヌイグルミが~…ねっ!」

 慌てすぎて変な同意を求めてしまう。

 詩穂はさらに変な顔をするばかりだった。

(なんで私が、こんなに焦んなくちゃいけないのよ!…そうだよ!別に!全然!全く!ばれても私に関係ないじゃないっ!!)

 心の中で自分自身に呆れながらも、はっきり言えずにいる自分がいる事も確かだった。

「猫のヌイグルミ?鈴音、持ってたっけ?」

 詩穂が小首を傾げて部屋の中を見回す。

 もちろんその時、鈴音の背中越しに机の上も見た。

(うわ、やばっ……あれ?)

 確かに詩穂の視線は机の上を見たはずなのに、詩穂は何も言わなかった。

「えっ、でも、ココに…」

と言って鈴音は机の上を振り返るが

「あれ?」

 そこにはヌイグルミの姿など無かった。
< 11 / 42 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop