鈴が鳴る時―王子+ヌイグルミ=少年―
☆★☆
深夜のデパートの屋上に1人の青年がポツンと立っていた。
名前は夏章(かづさ)
夏章はフェンスに寄り掛かりながら下界に広がる夜の街を眺めていた。
(最近は、夜でも明るいのですね…)
そして、今度は空を見上げる。
空には幾つかしか見当たらない星が、少なくても精一杯きらめいていた。
最近の都会の空には星が見当たらなくなってきている、という事に少し寂しさを覚えた。
そして星の近くには、何千、何万もある星とは違う一つだけの、今も見えなくなることのない、月。
お絵かきなどで月を塗るときは決まって黄色やオレンジなどだが、今見上げている月の色は―――血の色。血と同じ、禍々しい『赤』だった。
そんな事をぼんやりと考えていたら、遠くの空に何かがちらちらと見えた。
鳥にしては大きく、飛行機にしては小さすぎる。
自然と警戒心が出て、その遠くの空を睨みすえた。が、すぐに警戒心を解いた。
見えてきたのは、猫のヌイグルミとパジャマ姿の少女だったからだ。
(やっと来ましたか)
夏章はフェンスから離れ、屋上の中央に立つ。
暗い遠くの空から飛んでくる一人と一つはぐんぐんと近づいてきて、やがて目の前に静かに着地した。
着地したが、少女はぺたんっと座り込んでしまう。
無理もないだろう。
いきなり連れ出されて、しかも空を飛んできたのだから。
「大丈夫ですか?」
夏章は優しく言って手を差し伸べた。
少女は少し戸惑っていたが、やがて真っ赤な顔で遠慮がちにその手を取った。
「お名前は?」
夏章は少女を立たせながら尋ねた。
深夜のデパートの屋上に1人の青年がポツンと立っていた。
名前は夏章(かづさ)
夏章はフェンスに寄り掛かりながら下界に広がる夜の街を眺めていた。
(最近は、夜でも明るいのですね…)
そして、今度は空を見上げる。
空には幾つかしか見当たらない星が、少なくても精一杯きらめいていた。
最近の都会の空には星が見当たらなくなってきている、という事に少し寂しさを覚えた。
そして星の近くには、何千、何万もある星とは違う一つだけの、今も見えなくなることのない、月。
お絵かきなどで月を塗るときは決まって黄色やオレンジなどだが、今見上げている月の色は―――血の色。血と同じ、禍々しい『赤』だった。
そんな事をぼんやりと考えていたら、遠くの空に何かがちらちらと見えた。
鳥にしては大きく、飛行機にしては小さすぎる。
自然と警戒心が出て、その遠くの空を睨みすえた。が、すぐに警戒心を解いた。
見えてきたのは、猫のヌイグルミとパジャマ姿の少女だったからだ。
(やっと来ましたか)
夏章はフェンスから離れ、屋上の中央に立つ。
暗い遠くの空から飛んでくる一人と一つはぐんぐんと近づいてきて、やがて目の前に静かに着地した。
着地したが、少女はぺたんっと座り込んでしまう。
無理もないだろう。
いきなり連れ出されて、しかも空を飛んできたのだから。
「大丈夫ですか?」
夏章は優しく言って手を差し伸べた。
少女は少し戸惑っていたが、やがて真っ赤な顔で遠慮がちにその手を取った。
「お名前は?」
夏章は少女を立たせながら尋ねた。