鈴が鳴る時―王子+ヌイグルミ=少年―
 普段から見慣れていた鈴音はすぐに魂だと確信した。

 別段驚きもしないでその光景を眺める。

 魂はどんどん人間の形を形成していき、やがて鈴音と同い年ぐらいの少年が完成した。

(うわっカッコイイ!!)

 鈴音の突っ込みどころはまたもやかなりずれていたが、確かにヌイグルミから出てきた少年―――あれが暁の本来の姿なのだろう。暁はかなりかっこよかった。

 隣に立っている夏章も美形なので、二人でアイドルユニットが出来そうなくらいである。

「あれ?」

と鈴音が不意に声を上げた。

 今考えてみるとちょっと疑問な点が幾つかある。

 一つ目は、今いる暁はヌイグルミから出てきた魂で出来ている状態だ。という事は体はどうなっているのだろう?

「どうかしましたか?」

 そこまで考えていると夏章が声をかけてきた。

「あの、ちょっと…」

と言って鈴音が暁に歩み寄る。

「?」「?」

 夏章と暁が不思議そうに見ている中、鈴音は手を伸ばして自分よりも背が高い暁の頬を…つねった。

「いって!なにすんだ!!」

 暁は鈴音の手を振り払い、痛そうに頬をさする。

 その顔は怒ったせいなのか、恥ずかしいせいなのか、少々赤面していた。

「う~ん。夢でもないし、体もちゃんとあるときたか…」

 鈴音は暁を無視して手を握ったり開いたりしながら呟く。

「そういうのは自分のをつねろよ!自分のを!」

 暁が横で抗議の声を上げた。

 でもそれでは疑問の一つである“体の確認”が出来ないので仕方がない。

「うん。ごめん」

 鈴音は全く心のこもっていない適当な返答を返す。

 暁は不満丸出しの顔をしていたが、とにかくこれで一つ目の疑問は解決した。

 二つ目は、暁があのヌイグルミに憑依していたのなら…何故気がつかなかったのだろう?昼間の時も、さっきも。

 鈴音ほどの霊感があれば多少なりとも気付くはずだ。
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