鈴が鳴る時―王子+ヌイグルミ=少年―
 中は外見と同じく鼠色の正方形で広さはいたって普通。

 狭くもないし、広すぎない、普通のちょうど良い広さ。

 そして、なぜか家具もちゃんと置いてあった。

 中央にソファーとイスとテーブルがあり、周りに棚もある。

 あの数十秒の間で建物が出来ただけではなく、なぜ家具までしっかりと設置されているのだろう…

(これは夢だ。夢に違いない。覚めろ!覚めるんだ私!!)

 今更だがその言葉が鈴音の頭の中でずっと回っていた。

 これが現実だったらかなりヤバイ。ありえなさすぎる。ついに私、壊れちゃったのか?

「おい。なに突っ立ってるんだよ」

「え?」

 気付いたら暁はソファーにどっかりと座っているし、夏章はその横に執事として立っていた。玄関にいるのは鈴音だけである。

 鈴音は慌てて近くの椅子にちょこんと座った。

「さて、暁王子がすっかり忘れられていた事情説明をしようと思います」

 夏章がニッコリと微笑みながらそうきりだす。

 暁がその時に「忘れてねぇよ」と反論していたが、夏章は実に見事に華麗に完全無視。まぁそこは気にしないでおこう。

「では始めに、鈴音様は『魔法』という存在を信じますか?」

「魔法ですか?」

 問われる意図が全く分からない、という表情をする鈴音。

「はい」

「おい夏章。なんで、んな事聞いてんだ?」

「暁様は黙っていて下さい」

 夏章が一括入れると暁は押し黙ってしまった。

「おぉ」と隣で感心する鈴音。
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