鈴が鳴る時―王子+ヌイグルミ=少年―
 後ろで少年の声がした。

「?!」

 驚いて振り返るが、あるのはいつもと変わらない鈴音の部屋だった。

 だが一つだけ、おかしなところを発見する。

(…ヌイグルミ?)

 いつもと変わらないと言えば変わらないのだが…

 部屋の中心、鈴音の折りたたみ式の机の上に、白い猫のヌイグルミが一つ置いてあった。

 ヌイグルミは少し汚れていて、じーっと小さなボタンの瞳が鈴音を見つめている。

「何?コレ」

「コレじゃねーよ。暁だ」

「…は?」

 鈴音は目を丸くして、暁と名乗った(と思う)ヌイグルミを凝視する。

 先程の声はこのヌイグルミから発せられたらしい。(多分)


 ありえない事が、今、目の前で起きていた。(私の頭、大丈夫?)


「い、今…しゃ、しゃしゃ、しゃ…喋った?」

「日本語話せ」

 何気に鋭い突っ込み。鈴音はすーはーと深呼吸を一つした。

「…喋った?」

「喋っちゃいけないのか?つーか、言っとくけど俺、ヌイグルミじゃねーから」

 いやいやいや!ヌイグルミですから!!

「え、じゃあ、ヌイグルミじゃないんなら…なんなの?」

 自分でも驚くほど冷静に聞き返していた。が、突っ込み所が少し違うのはやっぱり混乱しているせいだろうか?

 だが、そんな鈴音の様子は全く気にせずに少し威張った声で

「“魔法使い”だ!!」

「はぁ?」

 マジで大丈夫か?私の頭。

 ヌイグルミの意味不明な発言に少し間をおいて、今度こそ素っ頓狂な声を上げた。

「だぁーかぁーらぁー!“魔法使い”だって!!」

 ヌイグルミはもう一度繰り返す。
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