ケータイ恋愛小説家
どうしよ。


「蓮君、これからも色々教えてくれる……よね?」


不安にあったあたしは、ついそんなことを尋ねてしまった。


そこで蓮君はハッとしたような顔をして、ようやくあたしの方を向いてくれた。


「ああ。うん」


「良かった……。あ、そだ! この前、蓮君に教えてもらったおかげでキスシーン、上手く書けたんだぁ。また今度キス教えてね?」


「へ? ああ……うん」


そう言うとまた、あたしから顔を背けてしまった。


なんかさっきから、ヘンだよ、蓮君。

返事も『ああ、うん』ばっかだし。


やっぱりカレー作ったの、迷惑だったのかな。

勝手なことしちゃったんだね、あたし。

あたしって何でこう空回りなことばっかりやってしまうんだろう。

もう、自分で自分が嫌になるよ……。

もう、帰ろう。


あたしはお母さんからもらったタクシー代を蓮君に返し、部屋を出た。

蓮君は送ってくれようとしたけど、それは断った。

なんだか一人になりたい気分だったから。



ああ……。

やっぱりあたしは男心がわかってないんだなぁ。

良かれと思ってやっても、迷惑にしかならないことってあるんだね。

ダメだな、あたし。
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