ケータイ恋愛小説家
さっきまで寝ていたからか、風邪のせいなのか、とにかくあたしの声はいつもよりずっと低くかすれていた。


《日向? すげー声じゃん……。風邪ひいたって?》


「うん……こほっ」


《おい……。大丈夫か?》


咳き込んだあたしに優しい言葉をかけてくれる蓮君。


《お前、喉弱いからなぁ……。水分取って、ちゃんとあったかくしとけよ?》


そんな優しい声、耳元で言わないでほしい……。

熱のせいで涙腺が緩いんだから。


「――蓮君」


《ん? どした?》


そこでハッとした。

あたし……何を言おうとしてるんだろう。

近くにいる美雨ちゃんの顔を見た。

相変わらず優しい目であたしの様子を見つめている美雨ちゃん。


「な……なんでもない。ありがとう」


蓮君の返事も待たず、あたしは携帯を美雨ちゃんに返した。


「もうちょっと寝るね」



部屋に戻り、パタンと閉めたドアにしばらく寄りかかって、それからずるずると床に崩れるように座り込んだ。


――あたしどうしちゃったんだろう……


蓮君の優しさを独り占めしたいなんて……


あたし、ほんとどうかしてるよ。
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