ケータイ恋愛小説家
「はぁ……」


いったい今日、何度目のため息だろう。


「美雨ちゃんが羨ましいな……」


無意識のうちに口から漏れた言葉に、傍にいた綾乃が反応した。


「なーに？　どした？　急に」


綾乃はガラにもなく、優しく包み込むような表情をあたしに向けた。

何でも話してみな？って、そんな感じで。

ひょっとしたら、最近あたしの気分が落ち込んでいることに気づいているのかもしれない。


「んー……。あのさ……」


あたしはポツポツと胸の内を語り出した。

自分でもどう処理すればいいかわからない感情を誰かに聞いてもらいたかったのかもしれない。


蓮君と美雨ちゃんのこと。

二人のデート現場を偶然目撃してしまったこと。

その場面が目に焼きついて離れないこと。

美雨ちゃんに向けられた蓮君の笑顔……

それを想像するだけで胸が締め付けられるように痛むこと……。

そして、そんな美雨ちゃんに対して抱いている、羨ましいと思う気持ちと同居するこの苛立ち。


「それは……」


ひとしきり話を聞いた綾乃は、あたしの目をじっと見つめる。






「恋だね」
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