ケータイ恋愛小説家
あたしは、合コンの時の記憶を一生懸命手繰り寄せた。


「天使がラッパ吹いた図が思い浮かんだんだよ? 大輔君の後ろがパァって明るくなって……それって“恋”じゃないの?」


綾乃はがっくり肩を落とし、心底呆れたような顔をあたしに向けた。


「日向ぁ……。漫画の読みすぎ……」


「うっ……」


それに関しては言い返す言葉もない。


「恋ってさぁ……。漫画みたいに単純じゃないんだよ。もちろん、絵に描いたように、ある瞬間にパッと恋に落ちることもあるだろうけどさぁ……」


綾乃はふいにあたしから目を逸らし、誰に言うでもなくポツリとつぶやいた。


「なんか……知らないうちに好きになっちゃってんだよね。んで、気付いた時にはもう、止めらんないの」


力無くそう言い終えると、何かを我慢するかのように、キュッと唇を結んだ。

その横顔はあたしが知っているいつもの綾乃とは別人のように思えた。


「……綾乃?」


綾乃はハッとしたように顔を上げて、ポンポンとあたしの頭を撫でた。


「とにかく。試しに、蓮君に会いに行ってみ? 顔見た瞬間、きっとドキドキするから」
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