ケータイ恋愛小説家
――ピンポーン!


――て。

……うきゃあああああ。


お……押しちゃったよぉおおお。

いきなり背後から声を掛けられたことに心臓が飛び出るほど驚いたあたしは、思わずチャイムのボタンを押してしまったのだった。

人差し指をジッと見つめる。


ど、どうしてくれるんだ!

あたしは掛けられた声の主をうらめしげな顔で振り返った。


「よっ。久しぶり」


ニカッと白い歯を見せて笑うその人は大輔君だった。


「も……もおおおお!」


あたしは大輔君に詰め寄った。


「ビックリさせないでよぉお。思わず押しちゃったじゃんか」


「へ? 押しちゃだめだったの?」


うっ……。

ダメじゃないっす。

いや、むしろ押すべきっす。


でも。



――あれ?



あたしは小首を傾げていっこうに開く気配を見せない玄関ドアをジッと見つめた。


「蓮哉なら、まだ大学だよ。調べものがあるって残ってた」


「あ……。そ、そうなんだ」


なんかホッとしたような……がっかりしたような複雑な気分。


「まぁ……そのうち帰ってくるっしょ?」


大輔君は一瞬、自分の腕時計を確認して、もう一度あたしを見た。


「良かったら、オレの部屋で待ってなよ」






「えっ……」



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