ケータイ恋愛小説家
無意識のうちに警戒態勢に入ったあたしはツツツと数歩下がって、鞄を両手でギュッと抱え、身構えた。


それをどう思ったのか、大輔君はハッとしたような顔をして

「あっ……。こないだみたいなことはぜってーしねーし」

と言って、手を顔の前で振る。


この間みたいなこと……って、アレだよね。

大輔君の部屋で彼にいきなり押し倒されたこと。

あの一件であたしは男の人の部屋に入る意味が嫌ってほど身に染みたのだ。


いつまでも黙ったままのあたしの気持ちは大輔君にも届いているようだ。

彼は困ったような顔をして、ポリポリと頭を掻きながら……


「そんな警戒しないでよ? それに今、ツレも一緒だし」


手にしていたコンビニの袋を掲げてあたしに見せた。


「買い出し行ってたの。 あ、ヤローだけじゃなくて女の子もいるから、ホント大丈夫だってば」


大輔君は部屋のドアを親指で指して、いつもの人の良さそうな笑顔で笑った。





「お……じゃましまー……す」


大輔君の部屋の中には、本当にお友達がいた。

男の人が一人と女の人が一人。


「さ。座って座って」


大輔君にうながされるまま、前に来た時よりもほんのすこし片付いている部屋の中央まで進んだ。


「あ……」


男の人の方があたしの顔をジッと見つめる。


「この前、蓮哉と一緒にいた子?」




「え……と。……あっ!」
< 117 / 365 >

この作品をシェア

pagetop