ケータイ恋愛小説家
「あ。そだ。お前に訊きたいことがあったんだ」


蓮君はあたしの目をじっと覗き込む。

ちょんと結んだ前髪と露になったオデコがやっぱ可愛くて、あたしの胸はまたキュンキュンしちゃってる。


ああ……なんか自覚しちゃったら、もうほんとダメだな。

大好き――蓮君。



だけど蓮君は天使みたいな無邪気な笑顔のまま、あたしの心臓を鋭い矢で打ち抜いた。



「美雨ちゃんの誕生日っていつだっけ?」



「え……」


「たしかもうすぐだったよな?」



ああ……。

やっぱこれが現実。

一人で浮かれて舞い上がっても、いつも地面に叩きつけられるような気分になる。

ひょっとして、わざわざ追いかけてきたのも、これを訊くためだったのかなぁ……。


「――日向?」



蓮君の言葉にハッとした。


いけない……。

また一人で落ち込んじゃった。


こんな気持ち知られたくない。

美雨ちゃんに嫉妬してる、醜いあたしの気持ちなんて……。



「え――とね。30日だよ。6月30日」


「そっか。サンキューな」


蓮君は、子供みたいにくしゃって顔を崩して満面の笑みをあたしに向けた。


でも、この笑顔はあたしに向けられたものじゃない。

今、美雨ちゃんのこと考えて笑ってるんだよね、きっと。

だめだ……。

また胸がズキズキと痛む。


「日向? どした?」


ヤバっ。

しかめっ面してんのバレちゃったかな。

何か誤魔化さなきゃ。



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