ケータイ恋愛小説家
「没収」


そう言って、ニヤリと微笑んだのは、数学の田中先生だった。


「お菓子の持込み、禁止」


相変わらず厳しいなぁ……。


「飴ぐらい良いじゃん……」ってぽつりとつぶやくあたしに……

「ああ?」って、顔を寄せる先生。


ほんと、S男なんだから。


「いえ! なんでもないです!」


あたしはピシッと背筋を正して答えた。

ああ……やっぱ田中先生とは相性悪いなぁ……あたし。



「ところで、お前ら。スカート短すぎるぞ」


先生は手にしていた定規でペチピチと自分の肩を叩きながらあたし達に呆れ顔を向けた。


あたしは先生のお説教をやり過ごそうと黙っていた。

だけどめずらしいことに、綾乃が言い返した。


「そんな短いかなぁ? てか、先生あたし達の足ばっか見てんでしょ? 先生のエッチ!」


「はぁ?」


先生は眉をつり上げて、いかにも怪訝そうな顔を綾乃に近づける。


そして、片手を綾乃の頭にのせて髪をくしゃくしゃと撫でながら……

「なーに言ってんだよ、お子ちゃまが」

と言って笑った。


うわぁ……。

先生のこんな笑顔って初めて見るかも……。

いつもすましてばかりだから、すごく新鮮に感じる。

整った顔が少し崩れて、いつもより子供っぽく見えた。


「セクハラっ」


一方、綾乃はあくまでも反抗的な態度で先生を睨む。


「はいはい」


そう言うと、先生はまたペチペチと肩を定規で叩きながら去って行った。



「綾乃……頭……」


あたしは綾乃の頭を指差した。
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