ケータイ恋愛小説家
“デート”という言葉を聞いて、あたしは壁にかかったカレンダーを見つめた。

今日は6月30日。

美雨ちゃんの誕生日だ。


そしておそらくデートの相手は……。


あたしはそれ以上考えるのが怖くて、手にしていたカフェオレを一口飲んだ。


「ねぇ……」


「なぁに?」


あたしはキッチンで忙しそうに昼食の用意をしているお母さんに声を掛けた。


「あたし達の名前って、お母さんがつけたの?」


「そうよ。どうしたの? 急に?」


「なんでこの名前にしたのかなぁって思って……」


「別に特別な意味はないわよ。生まれた季節に合わせてつけただけ」


――ジュー


フライパンに何かを入れた音がした。


お母さんはそれを手早くかき混ぜながらも話し続ける。


「美雨が生まれた日は、今日みたいに雨が降ってたのよ。日向が生まれた時は、入院してた病室からちょうど向日葵が咲いているのが見えてね……」


お母さんは思い出し笑いをするかのようにクスクス笑ってた。


「ほんとは“向日葵”ってそのまんま名前にしたかったの。でもお父さんが『それはダメだ!』って反対するもんだから……それで”日向“ってつけたのよ」


初めて聞いた……。

あたし達姉妹の名前の由来。

そうだったんだ……。

あたしの名前は向日葵からつけたんだ。

だとしたら、あたしがハンドルネームを“ヒマワリ”にしたのにも、ちょっとした運命的なものを感じちゃう。


でも……。


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