ケータイ恋愛小説家
夜遅くなって、美雨ちゃんが帰宅した。


あたしとお母さんはリビングでテレビを見ていた。


「あー。喉渇いたぁー」


美雨ちゃんは帰ってくるなりキッチンで麦茶を入れると、それを片手にあたし達の方へやってきた。


あたしはすぐに気づいた。

グラスを持つ美雨ちゃんの薬指に光るリングの存在。


「あ! それ、もらったの?」


お母さんが興味津々でそのリングを指差す。


「彼氏から?」


お母さんはこの手の話題が大好きだ。

まるで友達みたいに、あたし達の恋バナを聞きたがる。


「うん。今日やっと告ってくれたんだぁ……」


美雨ちゃんは照れ隠しのためか、そう言うとゴクゴクと麦茶を飲み始めた。

その頬はピンク色に染まっていた。

――幸せそう。


「カッコいい?」


「もちろん」


「今度家につれてきなさいよ」


「んふふ……」


あたしはお母さんと美雨ちゃんのやりとりをぼんやり眺めていた。


なんだろ?

あたしの心臓は意外にも冷静だった。


こうなることは、もう覚悟していたからかもしれない。


「あたし、もう寝るね……」


あたしは立ち上がって、リビングを出た。
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