ケータイ恋愛小説家
「もー。ビックリすんじゃん。てかよく入ってこれたね」


綾乃と教室で別れたあたしは、急いでハチの元に行った。


それにしても、いったいうちの学校のセキュリティはどうなってんだ。

あたしは首を捻った。


「そんなの。日向の弟のふりしたら、簡単に入れてもらえたよ?」


ハチは何食わぬ顔でいけしゃあしゃあと答える。

きっと守衛さんまで上手く丸め込んだんだろう。

ほんと口が上手いんだから。


校門を出る時にも、守衛さんに「ども」なんて言いながら軽く挨拶をかわすハチ。


そして、校門を出たとたん、あたしの手を握ってきた。


「ちょ……ちょっと。やだっ」


手を振り解こうとするものの、しっかり握られていて離れない。


「がっこ出たら、もう、弟じゃねーもん」


「そういう問題じゃないでしょー!」


あたしは空いている片方の手で持っていた鞄を振り回して、ハチの体に当てようとした。

だけどハチはそれをヒョイと簡単に避ける。

楽しそうに笑って、相変わらず手は繋いだままだ。

ほんと……憎たらしい。


「もぉ! ほんと放して……きゃっ……」


言いかけたあたしの言葉はそこで止まった。


半歩先を歩き、急に立ち止まったハチの肩に顔をぶつけそうになったからだ。


「ハチ……? どうしたの?」


あたしはハチの肩越しに前を覗き込む。


そして目の前の光景が目に入った瞬間、あたしの体も固まった。





「蓮君……」
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