ケータイ恋愛小説家
蓮君は歩道のガードレールに腰掛けて、こちらを見ていた。


「蓮君……なんで……」


――なんで、こんなところに?

言いかけて止めた。


蓮君のいた位置は、ちょうどうちの大学の正門の前あたり。

きっと、美雨ちゃんを迎えに来たんだろう……。



蓮君は黙ったまま腰を上げてこちらに近づいてくる。

その表情からは何も読み取れない。


――やっぱ怒ってるのかな。

あたしは昨日の電話のやりとりを思い出していた。

蓮君が近づくにつれ、あたしの緊張感が増していく。

なぜか悪い事をしているような気分になっていたたまれなくなる。

もうこれ以上、蓮君の顔を見られないと思ったわたしは、思わず下を向いた。




「久しぶり」


ふいに聞こえたその声に驚いて顔を上げると、蓮君がすぐ目の前に立っていた。

いつもの声。

低くて優しくて。


「う、うん……」


謝らなきゃ。

昨日はごめんなさい……って。

あたしは小さく深呼吸してそれから……。


「れっ……」


「彼氏?」


言いかけた言葉は、蓮君によって遮られた。

蓮君はあたしでなく、ハチに視線を向けている。


え?

彼氏?


ちっ……違う。
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