ケータイ恋愛小説家
「この夏の恋愛運……

『強引すぎるとかえって逆効果になります。押すばかりではなく、たまには引いてみましょう』

だって。……って、おい、聞いてる?」


「ほぇ……?」


ハチの声で慌てて顔を上げた。

今あたし達は、初めて会った場所であるファーストフード店にいる。


「あ……ごめん」


どうやらあたしはぼんやりしていて、目の前にいるハチの言葉をちゃんと聞いていなかったようだ。


ハチは頬杖ついたまま小さくため息をついた。


「この夏の恋愛運だってさ」


そう言って、トレーの上に敷かれた紙をトントンと指で指した。

そこには星座別にこの夏の運勢が印刷されていた。


「ハチって何座なの?」


「オレ? さそり座。日向は誕生日いつ?」


「8月20日だよ?」


「8月20日……ってことは獅子座かぁ……」


ハチは獅子座の運勢が書かれたところを目で追う。


「えーとね……

『振り向いてくれない相手をいつまでも思うのはやめて、目の前にいる身近な男性の気持ちに応えましょう』」



「えぇっ……!」


思わず飲んでいたジュースのストローから口を離してポカンとした。

だって、あまりにも今のあたしの状況にぴったりはまったんだもん。
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