ケータイ恋愛小説家
ハチはなおも読み続ける。


「『彼と付き合うときっと良いことがあります。顔も良いし、性格も良いし、キスは上手いし……エッチもまぁ…そこそこ……』」


「なっ。何言って……」


そこでようやく気づいた。

またからかわれた……。


あたしは身を乗り出してハチのトレーを覗き込んだ。


「もうー! そんなのどこにも書いてないじゃん!」


頬を膨らませて抗議の目で睨むあたしに、ハチは相変わらず頬杖ついたまま、にっこり微笑んだ。


「やっとこっち向いてくれた」


「えっ……」


「さっきから日向、オレといるのに、オレのこと見てないもん」


「そっ。そんなことないよ」


ハチがじっと見つめるから、あたしの顔は次第に熱を帯びていく。

その大きな茶色い瞳で見つめられると、全てを見透かされているような気分になっていたたまれなくなる。


「トイレ行ってくるっ」


あたしはこの場から逃れたくて、立ち上がった。
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