ケータイ恋愛小説家
トイレの洗面台の鏡の前に立つ。


「はぁ……」


思わず漏れるため息。

だめだぁ……。

ハチの言ってることは確かに当たっている。

ハチと一緒にいるのに、さっきからあたしは蓮君のことばかり考えてる……。


考えてもしょうがないんだけどなぁ。


蓮君は美雨ちゃんの彼氏で、あたしのことなんてなんとも思ってない。

だからハチとのことを知られたって、別に気にすることじゃないんだ。

頭ではわかってるのに……。


それでもやっぱりショックだったんだよぉ……。

もぉ……ヤダ。


あたしは鏡の中の自分を覗き込んで両手でペチペチと頬を叩いた。


「しっかりしろっ」


それから大きく深呼吸を一つして、トイレの扉を開けた。








「ごめんね。お待たせ」


席に戻ると、ハチが何かチケットのようなものを封筒に入れようとしていた。



「あ……それ」
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