ケータイ恋愛小説家
それはたしか……さっき蓮君がくれたものだ。


『二人で行ってくれば?』――そう言って、ハチの胸ポケットに入れた。



「それ、何だったの?」


「ああ……遊園地の入場券だった」


ハチはまたその封筒を胸ポケットにしまう。


「そうだったんだ……」


蓮君と遊園地ってなんか結びつかない。

なんでそんなもの持ってたんだろ。

第一、美雨ちゃんと一緒に行けばいいのに……。

なんでわざわざ、あたし達にくれたんだろう。


「夏休みに入ったら、行こうな」


「……うん」



「あ……でも」


ハチはジュースのストローを咥えながら、何かを思い出したかのような表情をした。


「どっちかってーと、プール行きてーな。いや海がいいかな。海行こうよ」


「えー……やだ」


「なんで?」


「だって」


あたしもジュースを手に取る。

飲みたいわけじゃないんだけど、意味もなくストローを曲げたり伸ばしながらポツリと呟いた。


「ハチの前で水着になるの……なんかヤだもん」
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