ケータイ恋愛小説家
声を聞くと同時に、ハチが飲んでいたジュースを吹きこぼした。


いつの間にかあたし達がいる席のすぐ横に、北清水学園の制服を着た男の子が二人立っていた。


ガタンッ!

ハチはイスを倒しそうな勢いで立ち上がる。


そして、声をかけてきた男の子の胸倉を掴んだ。


「てめぇ……その名前で呼ぶなっつうの!」


真っ赤な顔して、いつものハチからは想像できないぐらい動揺している。


一方、男の子の方は悪びれた様子もなく「なんで? いいじゃん、八兵衛~」なんてまたからかう口調で言う。


「うわああああああ! また言った! お前ら、明日覚えとけ!」


男の子達は「ハイハーイ」なんて言いながらその場を去って行った。


ハチは相変わらず真っ赤な顔のまま、ストンとイスに腰掛けた。


「あ~……。くそぉ……」


なんて呟きながら、うなだれてガシガシと髪を掻いてる。


ハチ……?

そう言えば、あたしハチの本名ってまだ聞いてなかった。

ハチはバンドやってるから、みんなからそう呼ばれてるって言ってたけど……。


ひょっとして……


ハチの本名って……。





八兵衛?




うっかり……八兵衛?
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