ケータイ恋愛小説家
今まで見たこともないような表情の蓮君。

射るように冷たい眼差しに、冷静だけどいつもよりトーンの低い声。

静かに話すから、余計にその感情が伝わってくる気がした。


――怒ってるの？



「……お前、大輔が好きなんじゃなかったの？」


え？

なっ……なによぉ。

なんでここに大輔君が出てくるの？


思いがけない問いかけに、あたしは声も出せないでいる。



「男だったら……ちやほやしてくれるヤツだったら誰でもいいわけ？」



「ちがっ……ひどい……」


気づいたら、もうポロポロと涙が頬を伝っていた。


蓮君の言ってる意味はなんとなく理解できる。


きっとハチのこと言ってるんだ。

あたしは前に大輔君が好きだと蓮君に言っていた。

それなのに、ハチと仲良くしてたから、蓮君は大輔君の友達として、あたしのこと怒ってるのかな？


だけど……。

だけど……。


そんなこと蓮君に言われる筋合いはない。


だって蓮君だって、やってること同じじゃない？

ううん、あたしよりひどいじゃん。

美雨ちゃんっていう恋人がいるのに女の人連れ込んだりして。



「うっ……」


だけど言い返す言葉が何も出てこない。

悔しいけど、嗚咽を漏らして、ただ泣くしかできなかった。

ほんとに悲しくて悔しくて絶望を感じた時って、何も言葉が出ないんだ……。
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