ケータイ恋愛小説家
「はい。ジュース」
森本さんは手にしていた2本の缶ジュースを律子さんとあたしに差し出す。
でもあたしはすぐにそれを受け取ろうとはしなかった。
だってこれはきっと、律子さんと森本さん自身のために買ってきたものなんじゃないだろうか?
それなのに、あたしがもらうわけにはいかない。
「あっ……。あたしいいです。これ、森本さん飲んでください」
「いや、いいよ。日向ちゃん、飲みなよ」
「いえっ……でも……」
しばらく押し問答を続けていると、森本さんが吹き出した。
「ぷっ……。じゃ、もう1本買ってくるよ」
「えっ……そんな」
それすらも悪いと感じ、おろおろしているあたしの手に強引にジュースを握らせると、森本さんは、体の向きを変えてあっという間に元来た道を戻っていってしまった。
「あ……どうしよ。悪いことしちゃった」
「いいのいいの。ああ見えてフットワーク軽いから」
隣で律子さんがプシュとプルタブを引く音が響いた。
「あれじゃ……モデルにはなんないでしょ?」
走り去っていく森本さんの後ろ姿を眺めながら律子さんがあたしに耳打ちした。
「でも良いやつなのよ。どうしようもないぐらい」
わかる気がする。
さっきのジュースのやり取りだけでも、森本さんの人柄が伝わってくるようだった。
「あたしの方が惚れてるのよ」
律子さんは肩をすくめて恥ずかしそうに笑うと、ジュースを喉に流し込んだ。
その様子になぜか心がほっこりと温かくなって、あたしも同じように缶ジュースを開けて、一口含む。
「日向ちゃんは……好きな人いる?」
森本さんは手にしていた2本の缶ジュースを律子さんとあたしに差し出す。
でもあたしはすぐにそれを受け取ろうとはしなかった。
だってこれはきっと、律子さんと森本さん自身のために買ってきたものなんじゃないだろうか?
それなのに、あたしがもらうわけにはいかない。
「あっ……。あたしいいです。これ、森本さん飲んでください」
「いや、いいよ。日向ちゃん、飲みなよ」
「いえっ……でも……」
しばらく押し問答を続けていると、森本さんが吹き出した。
「ぷっ……。じゃ、もう1本買ってくるよ」
「えっ……そんな」
それすらも悪いと感じ、おろおろしているあたしの手に強引にジュースを握らせると、森本さんは、体の向きを変えてあっという間に元来た道を戻っていってしまった。
「あ……どうしよ。悪いことしちゃった」
「いいのいいの。ああ見えてフットワーク軽いから」
隣で律子さんがプシュとプルタブを引く音が響いた。
「あれじゃ……モデルにはなんないでしょ?」
走り去っていく森本さんの後ろ姿を眺めながら律子さんがあたしに耳打ちした。
「でも良いやつなのよ。どうしようもないぐらい」
わかる気がする。
さっきのジュースのやり取りだけでも、森本さんの人柄が伝わってくるようだった。
「あたしの方が惚れてるのよ」
律子さんは肩をすくめて恥ずかしそうに笑うと、ジュースを喉に流し込んだ。
その様子になぜか心がほっこりと温かくなって、あたしも同じように缶ジュースを開けて、一口含む。
「日向ちゃんは……好きな人いる?」