ケータイ恋愛小説家
信じられなかった。

美雨ちゃんや蓮君はあたしと違って選ばれた人達みたいに感じていた。

二人はあたしにとって眩しい存在だったから。


「そ。初めて会った時なんて、ほんとダサくてね。モデルをお願いした時、今の日向ちゃんと同じこと言ってた『オレなんてダメです』って」


律子さんはその時のことを思い出したのか、クスクス笑ってる。


「でもさ。あたしはコンプレックスのない完璧な人間なんてつまんないと思ってる。そんな人に魅力なんてないよ。みんなどこかダメな部分があって……だけど、そんなダメな自分が好きだって思えてるヤツって最高にかっこいいんだ」


自然とカメラを抱えてファインダーを覗く律子さん。


「カメラってね。不思議とその人の内面が写し出されるの。ここから覗くとその人の本質が見える気がする。あたしはそれを引き出して形にしたい。だから写真を撮るの」


「律子さん……」


「ねぇ。日向ちゃんは、その彼のどこが好きなの?」


律子さんの質問に、あたしは今までの蓮君と過ごした時間を思い出す。


「えーと……意地悪なこと言うくせに心配性だったり……」


別れ際に振り返って口をパクパクさせて『気をつけて帰れよ』って言った蓮君。


「何でもちゃんと真剣に向き合ってくれるとことか……」


キスシーンやデートの設定も、あたしの話を聞いてちゃんと考えてくれた。


「バカみたいに優しくて……」


足をくじいたあたしを背負ってくれたり、風邪ひいた時は心配してくれた。


「でも子供みたいなとこもあって……」


前髪を結んだ蓮君の顔……最高に可愛かったなぁ。

今思い出してもキュンとしちゃう。

蓮君と出会ってから、あたしの心臓はずっと忙しい。



「きっと全部好きです。彼の全部……」



――カシャン……
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