ケータイ恋愛小説家
あなたの側で
「じゃ、帯はあたしが結ぶから、とりあえずこれに着替えて?」


今日は夏祭り。

結局、律子さんのモデルをすることにしたあたしは、浴衣を着付けてもらうために彼女のマンションに来ている。


「んーと。そうねぇ……。ショーツはそのままでいいけど、ブラは脱いでもらおうかな」


「えっ。ブラ……脱ぐんですか?」


「んー……」


ほんの少し考え込むような表情をした後


「きゃあああ」


律子さんは何を思ったのか、いきなりあたしの胸を鷲掴みにした。


「なっ……何するんですかぁ……」


あたしは両手で胸を庇いつつ、涙目で訴える。


「やっぱり。日向ちゃんって細いのに結構胸あるのね」


「ほええぇえ……?」


「そのままだと、帯に乗っかっちゃってバランス悪いんだよねぇ。だから胸押さえ気味に着付けなきゃなんないし。だからこっちね」


有無を言わせぬ態度であたしの目の前に浴衣用の下着を差し出す律子さん。


「それと、髪飾りなんだけど……。用意してたのがちょっとイメージと違うんだよねぇ。ひとっ走り買いに行ってくるから先に自分で着れるとこまで着といてくれるかな」



慌しくリビングのドアを閉めて部屋を出て行く律子さんを見送った。


――なんてマイペースな人なんだろう。

あたしは小さくため息をつく。
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