ケータイ恋愛小説家
聞きたいこと?

そういえば、この間蓮君の部屋に行った時も、「話しがある」って言ってたな……。


たしかあの時あたしは蓮君と律子さんのことを誤解してて、蓮君の話もろくに聞けない状態だったんだよね。

いったい何を言われるのかと緊張したせいで、蓮君の手を握る手にキュッと力がこもった。


あたしの様子に何かを感じ取ったのか、蓮君は歩調を少しゆっくりにして、あたしの方を見つめながら口を開いた。


「お前、ほんとに小説辞めたの?」


「え……」


想像もしていなかった問いかけにあたしはキョトンとする。


「いや、オレがどうこう言うことじゃないかもしれないけどさ。何で辞めたんだよ?」


あたしは俯いて唇をキュっと結んだ。

蓮君は黙ったままあたしの言葉を待ってくれてる。

そうだよね。

蓮君にはちゃんと言わなきゃ。

あんなに真剣にあたしの小説のことを考えてくれてたんだもん。


あたしは俯いたままポツリと呟いた。





「……書けなくなっちゃったんだ」
< 227 / 365 >

この作品をシェア

pagetop