ケータイ恋愛小説家
細心の注意を払ったつもりだったけど、その声は震えていたかもしれない。


「なんか急に……自分の妄想だけで作り上げた世界がバカバカしくて恥ずかしく思えたの。前に蓮君も言ってたじゃん? 『ありえない』って」


そう。

あれは初めて蓮君に小説を読んでもらった時だ。

「ありえない」って感想もらって、あたしったらマジ切れしちゃったんだよね。


「冷静になって読んでみたら、ほんと“ありえない”なって……思っちゃったの」


あたしは自虐的にクスクス笑った。


「だってさ。たいして可愛くもない子が、学校一のモテ男に一目ぼれされちゃったりさ。会ってすぐにキスされるわ、学校の中でエッチなことしそうになるわ……ほんとありえないよね? バカバカしすぎるよ……はは」


その時、それまでずっと黙って話を聞いてくれていた蓮君が突然口を開いた。



「『ありえなくてもいい』って、オレ言っただろ」



「え……?」


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