ケータイ恋愛小説家
蓮君はその中の一つを指差す。


「お前のハンドルネームと一緒じゃん」


蓮君が指差したのは向日葵柄の風鈴だった。


「向日葵は……今はなんかヤダ……」


今はその柄を見るのもつらい……。

あたしは、向日葵みたいに明るく咲き誇っていないんだもん。

完全に名前負けしてるよ。


「ふーん……じゃ、おじさんこっちちょうだい」


蓮君は別の風鈴を指差して、店の中にいるおじさんに向かって声をかけた。

結局、あたしの希望も聞かずに勝手に選んだのだ。


「はい。どーぞ。お前にソックリだろ」


蓮君から手渡されたのは金魚の柄の風鈴だった。


「ソックリ? どこがぁ?」


あたしは風鈴をかざして、不満げにプゥと頬を膨らませた。


「ほらっ。そういう顔するとこ。すぐ真っ赤な顔してふくれっ面するじゃん、お前」


蓮君はそう言うと、指であたしのほっぺを突付いた。

そのせいで、あたしの口からはぷっと息が漏れる。


「もぉ! 何すんのよー!」


「プッ……」


蓮君は何が可笑しいのか、肩を震わせて笑い出した。


「もぉ……人のこと馬鹿にしてぇ……」


あたしはぷぃと蓮君に背を向けた。


「お前さぁ……」


背後から蓮君の声がする。



「そのままでいいんじゃん?」
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