ケータイ恋愛小説家
蓮君は目を見開いて一瞬驚いたような顔をしたけど、それは気のせいだったのかもしれない。

なぜなら突然鳴り響いた携帯の音に掻き消されて、あたしの言葉は、きっと彼の耳には届かなかったから。


「あ、ちょっ……ごめん」


蓮君は、慌てて携帯を取り出す。


「あれ。律子さんだ」


律子さん?

そういえば、すっかり忘れてた!

今って、写真撮影の真っ最中だったんだよね……。



「えっ。ああ……うん。はぁ? 何言って……」


蓮君は携帯で話しながら、何故か一瞬ちらりとあたしを見た。


「マジで? ちょっ……律子さんっ」


そこで電話を切られたらしい。

蓮君は、はぁと小さくため息を漏らして携帯を閉じた。


「律子さん、どうしたの?」


あたしはキョトンとして蓮君を見つめる。
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